「高木阿波子?!」
高橋姉帰の顔から笑みが消え、目を見開いて、声を詰まらせながら言った。「あなたが言っているその人は、高木阿波子なの?」
「ええ、彼女も今日こちらで用事があって、たまたま同じホテルにいるんです。もうすぐ来ますよ。彼女に来てもらって、みんなに会ってもらいましょう。ちょうど証人になってもらえば、あなたが'W'の人間で、私たちを騙していないことが証明できますから」
この言葉を聞いて、みんなの興味が再び掻き立てられた。
眼鏡の男の言葉で、高橋姉帰の話が本当とは限らないことに気付いた。
彼女は自分が'W'の人間だと言っているのに、内部のルール変更も知らないなんて、むしろ部外者のように見える。本当のことを言っているのかどうか、誰にも分からない。
「異議がなければ、彼女を呼びに行きますが」眼鏡の男は眼鏡を上げ、立ち上がろうとした時、高橋姉帰に止められた。
「待って!」高橋姉帰は気まずそうに笑って、「これは私たちのクラス会なんだから、関係ない人を巻き込む必要はないでしょう」
「私はこの後忙しくて、大勢の人に会う時間はないの。みんなと食事を済ませたら、もう行かないといけないの」
「同じ業界の人なんだから、何を恐れることがあるんですか。さっき高木阿波子に連絡したら、すぐに来ると言っていましたよ」眼鏡の男は意地悪そうに笑って、「あ、そうそう、お姉さんも一緒だって言ってました」
お姉さん?
池村琴子?
なぜ彼女もここに?!
高橋姉帰は顔色を失い、心臓が激しく鼓動した。
高木阿波子が来るのはまだいいとして、なぜ池村琴子まで来るの?
ただのクラス会に参加しただけなのに、誰に何をしたというの?因縁めいた巡り合わせで、まさに会いたくない人に出くわすなんて!
「高橋姉帰さんの言う通りです。これは私たちのクラス会なので、関係ない人を巻き込む必要はありません」
渡辺義広が仲裁に入ると、高橋姉帰は感謝の表情を浮かべた。
渡辺義広が彼女を助けるのを聞いて、みんな察したように、渡辺義広がそこまで言うなら、彼と言い争う気にもならなかった。しかし、この時みんなも気付いた。渡辺義広は意図的に高橋姉帰を守っているのだと。