山本正博の目は冷たく、刃物のように鋭かった。渡辺義広は心臓が跳ね、怖くなって顔をそらした。
目の前の男の凄さを知っていた彼は、挑発するほど愚かではなかったが、山本正博を羨ましく思っていた。
好奇心を抑えようとしたが、それでも池村琴子を何度も見てしまった。
彼女の容姿には幾分かの朦朧とした美しさがあり、心を揺さぶるような美しさだった。特にその眉間には、慵懶な純粋さが漂い、唇の端が微かに上がっていて、今にも開こうとする花びらのようで、艶やかさと気品が一体となっていた。
彼は多くの美しい女性を見てきたが、その大半はインスタグラマー顔で、このように個性的で目が離せないほど美しい人は非常に珍しかった。
そして彼女の隣の男性は、さらに際立った容姿を持っていた。彼女が一輪の花なら、彼女の傍らの男性はその花を摘む人のようで、完璧に調和していて、少しの違和感もなかった。
「姉帰の体調が悪いので、清掃の仕事はできないかもしれませんが、他の仕事ならできるかもしれません」渡辺義広は視線を戻し、低い声で柔らかく言った。
「義広の言う通りよ。私の足がこうなったのは、あなたにも責任があるわ。清掃の仕事をさせて、しかもあんなに汚い仕事。これが広まったら、私たちの家族は笑い者になるわ」高橋姉帰は渡辺義広の言葉に続けた。
「あなたがもうやりたくないと言ったんでしょう?やめれば誰も笑わないわ」池村琴子は彼女が何を言いたいのか分かっていた。唇を軽く歪めて、「私の考えが足りなかったわ。清掃の仕事をさせるべきではなかった」
高橋姉帰は黙り込み、期待を込めて池村琴子を見つめたが、彼女は冷たく言った。「じゃあ、何もしなくていいわ」
「他の職位はないわ」
高橋姉帰は息を呑み、目が一瞬で赤くなった。
彼女は隣の渡辺義広を見て、池村琴子が何か言い出すのを恐れ、辛さを堪えながら言った。「私があなたの言うことを聞かなかったことに不満があるのは分かるわ。でもあんな場所の清掃は人がやる仕事じゃないわ。義広が私に言ってくれて、あなたに伝えに来たの。もう言ったから、あなたに借りはないわ」
言い終わると、彼女は渡辺義広の腕を引いた。「義広、行きましょう」