第433章 この恋愛脳、参った

その言葉は皆の目を覚ましたかのようだった。

こんなに早く釈放されたということは、警察が既に調査を終えたということだ。

池村琴子はまぶたがピクリと動き、目が急に痛くなった。

「警察は屋上の監視カメラを確認した」山本正博の声は淡々としていて、まるで自分とは無関係な事を話しているかのようだった。

彼の深い眼差しは、池村琴子に向けられたまま離れなかった。

池村琴子は口を開きかけたが、胸が詰まる思いだった。

監視カメラを確認して彼を釈放したということは、この件は彼とは無関係だということだ。

彼女は目を伏せ、自分に近づいてくる山本正博の足を見つめながら、罪悪感が湧き上がってきた。

「話がある」

山本正博の声は暗く低く、明らかに感情を抑えていた。

鈴木羽が何か言おうとしたが、鈴木愛に引き止められ、軽く首を振られた。

鈴木羽がどれほど心配していても、今は自分が口を出すべき時ではないことを理解していた。

鈴木羽は心配そうに娘を見つめ、制止の言葉を飲み込んだ。

池村琴子は山本正博を見る勇気が出ず、うつむいたまま小さく頷いた。

山本正博は彼女の手を取ろうとしたが、何かを思い出したように手を引っ込めた。

池村琴子は彼の引っ込めた手を見つめ、心が酸っぱく苦くなった。

彼は自分を信じてほしいと言ったのに、彼女はそれができなかった。

山本正博が彼女を責めるのも当然だった。

彼女は山本正博について一階のある片隅に来て、静かに彼を見つめた。

「監視カメラの映像を見て」山本正博は自分のスマートフォンを彼女に渡した。

映像の中で、屋上は暗かったものの、立っている二人が山本正博と六郎だということは何となく分かった。

映像の中の二人の会話を聞いていると、特に山本正博の「ただ彼女の身元を確認したかっただけだ」という言葉を聞いた時、池村琴子の顔は真っ赤になった。

彼女が「W」組織のボスであることを山本正博に打ち明けていなかったが、山本正博が既に疑っていたとは思わなかった。

近藤正明が賭けをしようと言った時、真相が明らかになった。

自分に忠実だと思っていた六郎がこんな愚かな行動をするとは、彼女には想像もできなかった。

彼女は六郎のことを理解していると思っていたが、それは表面的なものに過ぎなかった。