彼から見れば、これは些細なことで、池村琴子に話しても、彼女は六郎を助けてくれるはずだった。
しかし、近籐正明は手を振って、それ以上話すことを拒んだ。
四郎は、これが近籐正明の底線だと分かっていた。
今の彼は、面倒を避けたいというよりも、逃避しているのだった。
しかし四郎は部屋を出た後、こっそりと池村琴子にメッセージを送った。
その時、池村琴子は国際展示会でジュエリーを見ていた。
「池村さん、今回の展示会の主催者は上田先生です。先生はこれが最後の展示会になると仰っていて、今後の展示会は恐らくあなたが引き継ぐことになるでしょう」山崎雅子は池村琴子の傍らに立ち、少し頭を下げながら、丁重な声で言った。
池村琴子は展示会の規模を見て、心の中で感嘆した。
この展示会は国際規模なので、小さくはないはずで、回る資金も天文学的な数字になるだろう。