「そうね、松田柔子も私の学生だったわ。彼女が木村家の息子に良い学生を紹介してほしいと言ってきたの。あの子の要求は高かったけど、あなたしか思い浮かばなかったわ。それに、あなたは長年彼氏がいなかったから、先生としては二人を引き合わせようと思ったの。まさか良かれと思ってしたことが、こんな結果になるなんて」そう考えると、指導教官は後悔の念に駆られ、松田柔子のことを隠すことなく、豆をこぼすように話し続けた。
今回の紹介で最も気に入っている学生を傷つけてしまったとしたら、それは本当に申し訳ない過ちだった。
鈴木愛の頭の中は松田柔子のことでいっぱいだった。
松田柔子という人物については、特に仙従妹が何度も危険な目に遭った後、よく知るようになっていた。
この松田柔子は、木村爺さんが孫の嫁として認めた人物だった。
木村誠治が彼女に仕掛けた薬も、きっと松田柔子の仕業に違いない。
そう考えると、鈴木愛の頭がはっきりしてきた。
「愛さん、今、木村家の息子はどこにいるの?」
「留置所です」
指導教官は驚いて「あ」と声を上げ、数秒の沈黙の後、頷いて言った。「留置所に入れられて良かったわ。これで他人に害を及ぼすことはないでしょう」
「先生、これらのことを説明できて安心しました。急用があるので、先に戻らないと...」
「ええ、ええ、行きなさい。安心して。先生は頑固な人間じゃないから、こんなことがあったと分かった以上、もう二度とあなたたちを引き合わせようとはしないわ」
指導教官に説明を終えると、鈴木愛の心の重荷が下りた。
彼女はこの指導教官を尊敬し、とても好きだった。大学院入試や博士課程、留学の際にも、この指導教官の指導のおかげで成功できた。まさに再生の恩人とも言える存在だった。
おそらく、そういった理由で松田柔子は指導教官に近づいたのだろう。
ようやく原因が分かってよかった。
その時、池村琴子は鈴木家で仕事を処理していた。自分の仕事を終えたところで、鈴木愛からのメッセージを見た。
松田柔子...
池村琴子は目を細めた。
木村利男との関係や、松田柔子と山本正博との不明瞭な関係があったため、彼女はただ松田柔子に警告を与えるだけで、実際の行動は起こしていなかった。