「木村家の後継者が『W』を引き継ぐことについてですか?」池村琴子は軽く笑い、言葉の端々に深い意味を込めた。
松田明男は彼女がこのことまで知っているとは思わなかったが、考えてみれば、おそらく木村勝一から聞いたのだろうと推測した。
「ここまで話が及んだからには、もう遠回しな言い方はやめましょう。私は『W』の社長が誰なのか知りませんが、すぐに降りることになるでしょう」松田明男は確信に満ちた口調で言った。「あなたが組織内で重要な立場にいることは知っていますが、どんなに重要でも創設者には敵いません。木村利男は私の親友で、『W』の未来を私に託し、後継者に引き継がせるよう頼んでいました」
「彼の遺言と手紙は、すべて私が持っています」
松田明男は落ち着き払って話し、まるで『W』の社長交代が簡単なことであるかのように振る舞った。