松田柔子は息を詰まらせたが、自分が頼みごとをしていることを思い出し、意を決して言った。「山本家のあの火事は、事故ではありませんでした」
事故ではない?
池村琴子はあの大火を思い出した。本来は山本正博を狙ったものだったが、最後に山本正広が彼を救った。
この火事は不可解な形で起きたが、事故ではなかったとは。
木村誠治の松田柔子への執着を思い出し、池村琴子は目を細めた。
「私は木村誠治のところで全部聞きました。聞いたことを全部お話しできます。でも、私にも一つ条件があります」池村琴子が同意しないことを恐れ、松田柔子は急いで付け加えた。「私を守ってください。木村誠治がどれだけ異常かはあなたも見たでしょう。このような人物に、私が事の真相を話してしまえば、きっと私を殺すはずです」