第509章 松田柔子の価値

池村琴子はついに足を止め、少し首を傾げて、悠然と彼を見つめた。

「取引?」

珍しいことに、木村誠治が彼女と取引をしたがっているなんて。

池村琴子の顔を見つめ、木村誠治は一瞬ぼんやりした。

今日の彼女は特別に着飾っていて、一段と綺麗に見えた。

以前から彼は彼女が綺麗だと思っていたが、様々な美女を見てきた彼は、もう美しさに感動することはなくなっていた。

しかし今日の池村琴子は、なぜか彼を緊張させ、心の底から寒気を感じさせた。

彼は池村琴子が昨夜松田柔子に会うと思っていたが、まさか翌日まで引き延ばすとは。

この一晩、彼は眠れなかった。松田柔子も眠れなかったはずだ。

今朝早く、池村琴子は綺麗に着飾って優雅に現れた。

まるで彼と松田柔子を意図的にもてあそんでいるかのように。