第515章 壁にぶつからなければ気が済まない

高橋敬一とは違って、高橋忠一はこの写真を見た瞬間に問題の所在がわかった。

この渡辺義広について、以前調べた時から感情面での経歴が空白すぎると感じていたが、高橋姉帰を手に入れられる男が、そう簡単な人物であるはずがない。

高橋姉帰は高橋家の実子ではないものの、これまでの薫陶を受けて、並の人物では彼女の目に適うはずがない。

こんなに短期間で高橋姉帰の心を開かせたということは、渡辺義広の手腕の凄さを物語っている。

彼は渡辺義広が只者ではないと思っていたが、もう一人の恋人がいるとは予想もしていなかった。

「奴は高橋家を狙っているんだ」高橋忠一の声は冷たかった。

「私も狙われているわ」池村琴子は高橋姉帰と渡辺義広が付き合い始めてすぐに「W」との協力を必死に求めてきたことを思い出した。