河野由夢は涙目で池村琴子を見つめながら言った。「申し訳ありません、池村さん。あの時、あなたを抱き去ってゴミ箱に捨てたのは私です。でも、私も不安でたまらなくて、あなたのそばにいくつかの手がかりを置いていきました。いつか家族を見つけられるようにと思って」
「ゴミ箱に置いた後も、私はその場を離れませんでした。ずっとそばで見守っていて、おばあさまに拾われるのを確認してから安心して帰りました。私もあの時は仕方なかったんです……」
河野由夢の言葉を聞いて、池村琴子は何も言わなかった。
許すことはできない。河野由夢は彼女の人生を完全に変えてしまったのだから。
もし運が良くなければ、生きることさえ難しかったはずだ。
他人の子供を誘拐する人間を同情することは決してない。おばあさまのことはとても好きだけれど、河野由夢が彼女の人生を変えてしまったのは事実だ。