そう思うと加藤恋は急に興奮してきた。ずっとやりたかったことがあった。それは、ウェディングドレスを買って、母に見せることだった。
福田のお爺様と母は盛大な結婚式を挙げたいと考えていたが、二人が法的に夫婦となった直後、母の田中鈴が重病で入院してしまい、結婚式の話は保留となった。
その後、福田のお爺様も他界し、加藤恋は福田家に期待することもできず、誰も彼女のために結婚式を開いてくれようとはしなかった。
でも今は、お金があるから、やりたいことが実現できる。
ウェディングドレスを買うことを考えると、真っ先に思い浮かんだのがRCオーダーメイドだった。これは西ヨーロッパのプライベートブランドで、超高級ブランドとまではいかないものの、小さな贅沢品と言えた。
しかし最も重要なのは、そのデザインコンセプトが加藤恋の心を魅了したことだった。まだ学生の頃、ルームメイトに将来結婚したら絶対にここでドレスをオーダーメイドすると話していた。派手な装飾や精巧なビーズ刺繍はないものの、それはRCのドレスの価値を下げるものではなかった。