そう思うと加藤恋は急に興奮してきた。ずっとやりたかったことがあった。それは、ウェディングドレスを買って、母に見せることだった。
福田のお爺様と母は盛大な結婚式を挙げたいと考えていたが、二人が法的に夫婦となった直後、母の田中鈴が重病で入院してしまい、結婚式の話は保留となった。
その後、福田のお爺様も他界し、加藤恋は福田家に期待することもできず、誰も彼女のために結婚式を開いてくれようとはしなかった。
でも今は、お金があるから、やりたいことが実現できる。
ウェディングドレスを買うことを考えると、真っ先に思い浮かんだのがRCオーダーメイドだった。これは西ヨーロッパのプライベートブランドで、超高級ブランドとまではいかないものの、小さな贅沢品と言えた。
しかし最も重要なのは、そのデザインコンセプトが加藤恋の心を魅了したことだった。まだ学生の頃、ルームメイトに将来結婚したら絶対にここでドレスをオーダーメイドすると話していた。派手な装飾や精巧なビーズ刺繍はないものの、それはRCのドレスの価値を下げるものではなかった。
むしろ、精巧な立体的なカッティングと優美なレースの縁取りが、着る人の優雅さと素晴らしさを引き立てるのだった。
しかし、加藤恋が店に一歩足を踏み入れた途端、止められてしまった。
「お客様、店内VIPカードをご提示ください」
穏やかな男性の声が聞こえ、店の一対一のオーダーメイドサービス担当者が手を伸ばして、彼女を止めた。
そこで加藤恋は、このような場所ではVIP会員でないとサービスを受けられないことを知った。
「VIPカードを持っていないのですが、今作ることはできますか?」加藤恋が顔を上げると、サービス担当者の顔と目が合い、驚いて声を上げた。「佐藤剛?どうしてここにいるの?」
大学の同級生にここで会うとは思わず、加藤恋は少し驚いた。
「同級生同士だから話が早いわね。VIPカードを作ってもらえない?今日ウェディングドレスをオーダーメイドしたいの」
同級生の縁があるのだから、加藤恋は今日人に迷惑をかけたら、きっと後で何らかの形で恩を返さなければと考えた。
「おや、加藤恋!学生会副会長じゃないか。どうしてここにいるの?」