031 買一つ送一つ

温井寧々は、まさかこんな大物に喧嘩を売ってしまうとは思わなかった。しかし、目の前の少女は全身どこを見ても金持ちの雰囲気など微塵もなく、むしろ世間知らずの貧乏な女にしか見えなかった……

「今後はすべてのお客様を平等に扱い、絶対にこのようなことをしてはいけません」加藤恋は冷たく言った。もし彼女の部下にこのような人間がいたら、セイソウリキは上場前に潰れていただろう。

デブも駆け寄り、加藤恋の手をしっかりと握りしめた。「そうですとも!お嬢様、このような者のために怒らないでください。心からお詫び申し上げます」

黒川端は、このデブがこれほど大胆だとは思わなかった。「お前は何様のつもりだ、お嬢様の手に触れるなんて!気が狂ったのか?」

デブの顔面に一発パンチを食らわせ、黒川端は怒鳴った。「お嬢様から汚い手を離せ!何をするつもりだ?早く離せ!手を切り落とすぞ!」

この一撃で、デブはフラフラになった。

やっと体勢を立て直したとき、入り口の警備員に手を振って言った。「おい、この女を外のゴミ置き場に捨てろ。そして我々のブランドの全店舗に、今後このような人間は採用しないように伝えろ」

この言葉を聞いた温井寧々は、その場で気を失ってしまった。長年の努力が一瞬にして水の泡となった。高級ブランド店員の立場を利用して金持ちと結婚できると思っていたが、それも今では夢物語となってしまった。

「はい、社長!」店内の警備員はもはや躊躇わず、気を失った温井寧々を引きずって外に連れ出した。

加藤恋は勝利勳章の前に歩み寄り、デブに手招きをした。「主人は勳章集めが好きなの。包んでもらえる?」

デブは必死に頷いた。「すぐにお包みいたします!ギフトボックスと油紙、どちらがよろしいでしょうか?ドライフラワーも添えましょうか?」

「油紙で、上にドライの青いチューリップを添えて。あ、このカードで支払います」そう言って加藤恋は個人用カードを取り出した。

「お嬢様、もしお気に召されましたら、私からの贈り物として」黒川端とデブが同時に口を開いた。

「結構です。これは私自身が贈りたいものですから」加藤恋は真剣に言った。

しかしデブは申し訳なさそうに言い出した。「お嬢様、私からの些細な気持ちとして、どうかお受け取りください……」