007 取引中止

唐沢行は頷いた。向井家の勢力は当然多くの敵を作っているだろうし、向井家の事業も多いため、加藤恋は忙しいはずだ。その中で、セイソウリキは彼女の家族にとって、ほんの些細な存在に過ぎず、そこに多くの心思を費やしたくないのも無理はない。

「承知しました。今後お嬢様から何かございましたら、どうぞ私にお申し付けください。」

その時、男性秘書がドアをノックし、急いだ様子で言った。「社長、木村という名の女性が秘書を連れていらっしゃっています。今、お時間はありますでしょうか？」

「少々お待ちいただくよう伝えてください。私は先に用事を済ませなければなりません。貴客がお見えになっているので、対応させていただきます。」

加藤恋は顔を上げて唐沢行を見つめ、やや疑問を含んだ声で尋ねた。「あなたはその木村さんをご存知なの？」

唐沢行はため息をつき、「以前の取締役がレース好きで、それで木村家と付き合いがあったんです。彼らはずっとセイソウリキと協力して新しいサーキットを建設したがっていますが、レース界の大物は多いので、特に協力する価値のある部分が見つかっていません。でも彼らの家は常に人を派遣して話し合いたいと言っていて、もう何度も来ています。」

「まだ協力が始まっていないのなら、今からセイソウリキは木村家との取引を拒否し、将来も協力の機会はないでしょう。もしレース業界に進出したいのなら、陸田家を考慮してみてはどうでしょうか。トップクラスの老舗レース一族として、現在陸田さんは昏睡状態ですが、彼の息子も同様にサーキットで素晴らしい実力を見せており、将来性は十分にあります。」

加藤恋の分析が的確なのを聞いて、唐沢行は少し驚いた。彼も以前から陸田家との協力を考えていたが、陸田さんの意識回復のため、陸田家はここ数年、多くの人材と財力を費やしていた。

「それに私たちが協力相手を選ぶ際は、利益だけでなく相手の人格も見なければなりません。分かりますか？」

加藤恋は真剣な眼差しで唐沢行を見つめ、絶対に木村家にセイソウリキを利用させてはいけないという意味が込められていた。

唐沢行は頷いた。多く問う必要もなく、きっと木村家が加藤恋の気に障ることをしたのだろう。

「ご安心ください。今すぐ彼らをお断りしてまいります。」