009 2つの大事

一方の福田家では、お婆様がこのニュースを聞いて、その場で気を失ってしまった。

目覚めた後の最初の行動は、福田章と木村由美の婚約を解消するよう要求することだったが、福田章には特に取り柄もなく、福田家の将来は自動車工学産業に進出したいと考えており、木村家の力も必要だったため、この件は一旦保留とした。

……

その時、唐沢行のオフィスでは。

加藤恋は先ほど起きた全ての出来事を知り、唐沢行の仕事ぶりをますます評価していた。

「あなたのような人材は、きっと多くの企業が引き抜きを狙っているでしょうね」加藤恋は微笑みながら唐沢行を見つめた。「あなたの仕事の進め方が気に入りました。今日からは何かあれば直接私に相談してください。必要なことは可能な限り対応します」

「加藤社長、ありがとうございます」唐沢行は淡々と返答した。この突然就任した社長についても、時間をかけて理解する必要があると考えていた。

「それと、もう二つ頼みたいことがあります」加藤恋は頷きながら話し始めた。

「はい、おっしゃってください」

「一つ目は、セイソウリキグループの新社長就任の発表ですが、私の身元は明かさず、田中という姓だけを公表してください」

本来なら向という姓を使うか迷っていたが、母が死ぬまで姓を戻さなかったことを考えると、この姓を受け入れるべきかどうか考える必要があった。

「二つ目は、当グループが20億ドルを投資して、市民スポーツセンターを建設することを発表し、同時に入札を開始します。市内のすべての建設会社が参加できるようにしてください」

福田隼人が建設部門に進出したいと考えているなら、この流れに乗せてあげよう。福田のお婆様はセイソウリキと結びつき、セイソウリキを福田家の後ろ盾にすることを夢見ている。もし福田隼人が成功すれば、福田家での地位は確実に安定し、彼を害しようとする者たちも自然と控えめになるだろう。

今やセイソウリキは自分のものなのだから、夫のために真剣に計画を立てなければならない。

この二つのニュースが発表されると、東京中が一気に沸き立った。

セイソウリキグループの社長交代を聞いて、福田のお婆様はようやく何が起きたのか理解した。なるほど、木村家が協力企業リストから外された理由がこれだったのか。