その時、福田嘉と中村慧は大きな門の前に立っていた。福田嘉は中村慧に、カジノでの彼らの行為、人々を騙す手口、さらには詐欺の手法までを生き生きと説明していた。
一方、中村慧は高慢な表情で、時折その門から誰が出てくるのかを窺っていた。今日は福田隼人の母親の前で自分をアピールする絶好の機会だと知っていた。加藤恋もいて、幼なじみの雲原静が雲原家に戻ってきたこのタイミングで、彼女はこの機会を逃すわけにはいかなかった。
目の前のこの女性さえ味方につければ、福田隼人を手に入れることなど造作もないはずだ。
そうすれば、福田家は商売で、中村家は政界で、東京で風雲児となれる。そう考えただけで、中村慧は興奮を抑えられなかった。
「まさか、この人たちが雲原家のカジノよりも酷いなんて!本当にひどすぎます!おばさま、ご安心ください。必ずオーナーから説明を求めさせていただきます!」
福田嘉はこの言葉を聞いて、思わず拍手を送った。顔に浮かぶ興奮と喜びは隠しようがなく、二人の女性の周りに集まって見物していた奥様クラブのメンバーたちも中村慧に大きな期待を寄せていた。
加藤恋だけが首を振り続け、福田隼人を呼ぶべきかどうか迷っていた。中村慧はあまりにも自分を過大評価しすぎている。このままでは、どんな目に遭うか分からない。
カジノという場所に、何の権力も影響力もないなどということはあり得ない。
雲原の爺様と彼女の祖父との複雑な関係を考えると、このカジノの背後に誰がいるのか分からない。
彼らが話している間に、その重々しい大門が突然開かれ、続いて石川春が金糸縁の眼鏡をかけた男性と一緒に出てきた。
その男性は非常に若く見え、このような商売をしているようには見えなかったが、加藤恋は彼の目に狡猾さと打算を見て取ることができた。
橋本様の後ろには数人の屈強なボディーガードが従っており、一目で各々が侮れない実力の持ち主だと分かった。
彼の身分は非常に微妙で、東京の人々は彼を見かけても何をしている人物なのか分からないため、中村慧を含め、誰一人として彼がどれほど手強い相手なのか知らなかった。
しかし、皆は石川春がどんな人物か知っていた!
一瞬にして群衆の中の雰囲気が爆発し、奥様クラブのメンバーたちは口々にざわめいた。