054 外国へ売り飛ばす

皆は、この時の橋本様が明らかに怒りを抑えているのを感じ取ることができた。

彼の地位はあらゆる業界で尊敬されているのに、まさか今日このような事態に遭遇するとは思わなかった。

最初は中村家の愚かな娘が彼に向かって大声で叫び、次に自惚れの強い意地悪な女が騒ぎを起こし。

それだけでなく、今度は若い娘が彼のやることに口を出してくる。本当に橋本様を誰でも軽んじていいと思っているのか？

深く息を吸い込んで、橋本様は加藤恋を見つめた。「本来なら借金の代わりにするつもりはなかったが、お前は分をわきまえていない。今なら海外に売り飛ばして、その美貌で金を稼がせ、病気になったら臓器を摘出して売ることもできるぞ」

加藤恋はそれを聞いても恐れる様子もなく、むしろ落ち着いて携帯を取り出し、こう言った。「そんなに急がなくても。一本の電話をさせてください。きっとあなたの考えは変わるはずです」

そう言って、加藤恋は直接黒川端に電話をかけた。

加藤恋からの電話を久しぶりに受けたようで、黒川端は敬意を込めた驚きの声で答えた。「お嬢様、何かご用でしょうか？」

「東京に最近、橋本様という方がいらっしゃったのですが、ご存知ですか？」加藤恋は静かに尋ねた。

黒川端は少し考えてから答えた。「お嬢様がなぜ彼と関わることになったのですか？その男のことはよく知っています。世間では中堅世代の優秀な人物と言われていますが、私から見れば若造に過ぎません。大したことはありません」

「お付き合いがあるのですか？」加藤恋はこんなにも都合よく事が運んでいることに驚いた。

「あいつは以前から私たちと繋がりを持とうとして、たくさんの贈り物を持ってきて取り入ろうとしましたが、私は忙しくて相手にする暇がなかったのです。どうしたのですか、お嬢様に何か失礼なことでもしたのですか？」

加藤恋は軽く笑って、さらりと言った。「大したことではありません。彼が今、私の臓器を切り取って売ろうとしているだけです」

電話の向こうの黒川端はほとんど激怒していた。「この馬鹿野郎、どこまで図に乗るつもりだ！我々のお嬢様に手を出すとは。今どちらにいらっしゃいますか？すぐに人を連れて行きます。二度と人前に出られないようにしてやります！」

「わざわざ来ていただく時間を無駄にしないでください。直接電話で話してもらえれば結構です」