秋山心という部外者がまだいたため、加藤恋は事を荒立てたくなかった。結局は福田隼人の幼なじみだし、面子を立てなければならなかった。先ほどは距離が離れていて良く見えなかったが、今や秋山心は彼女のすぐ傍にいて、より不思議に思えた。今の気温はそれほど低くないのに、なぜこんな天気なのにハイネックを着ているのだろう?
すぐに、スイートルームの中で全員が席に着いた。頭上には広大な星空が、足下には海底世界が広がり、内装からデザインまで明らかに手の込んだ作りだった。
福田章は秋山心を上座に座らせ、加藤恋を一番隅に追いやった。秋山心だけが時々彼女に話しかけ、他の人は全く相手にしなかった。福田桐子に至っては雲原静に「お義姉さん」と呼びかけ、とても親しげだった。
しばらくすると、精緻な料理と高級ワインがスタッフによって運ばれてきた。