074 2台を購入

加藤恋は思わず眉をひそめ、接客担当者の方を見た。「七十四万円に何か問題でもあるの？」

加藤恋がこんなにも堂々とした態度で言い放つとは思わなかった接客担当者は、思わず笑い出した。「面白いわね。あなた、見ているくせにわざわざ聞いてくるなんて。ここでそんな無駄な話をして何になるの？あなたみたいな身分の人に買える訳ないでしょう！後で契約する時にお金が払えなかったら、恥をかくのはあなたよ！」

「最近は販売員の質も落ちたものね。病気なら薬を飲んで帰りなさい。警察や医者を呼んで連れて行かせる必要はないでしょう！」

その販売員は加藤恋に白い目を向けた。「ふん、あなたなんか何様のつもり！警備員を呼んで追い出してやろうか？タダ飯食らいのクズが、金持ちのふりなんかして！」

加藤恋はその言葉を聞いて思わず笑い出し、尋ねた。「基本給以外に、一台売るごとのコミッションはいくらなの？」

相手は軽蔑的な口調で答えた。「40万円よ！」

「あなたみたいな人には、一銭も相応しくないわね」加藤恋は彼女に頷いて、分かったという素振りを見せた後、そのまま玄関へ向かって立ち去った。

ちょうどその時、戻ってきた販売マネージャーと出くわした。加藤恋は胸の名札に「林原元」と書かれているのを一目で確認した。

「ここの責任者ですか？」加藤恋は尋ねた。

「はい、何かご用でしょうか？」

加藤恋は振り返り、まだそこに立っている販売員を見て、冷たく言った。「もしこれ以上お客様を失いたくないのなら、彼女を解雇した方がいいでしょう」

その販売員はそれを聞くや否や駆け寄ってきた。「マネージャー、この女の言うことなんか信じないでください！この人、おかしいんです。ただの食い逃げ目的で来たんですよ！」

加藤恋は思わず笑みを浮かべた。「そんなに私が気に入らないなら、今すぐ帰るわ。私が何しに来たのかは、見ていれば分かるでしょう」

そう言って、加藤恋は店を出た。同じグループの車とはいえ、売上が立たなければノルマは達成できないのだから。

BMWのショールームへ真っ直ぐ向かった。加藤恋は派手にしたくなかったが、よく考えてみれば、最高級モデルなら秋山心のあの派手な性格にも相応しいだろう。