093 来者不善

福田隼人は秘密を完璧に守り通し、加藤恋は彼女のためにクリスタルガーデンを貸し切りにしたことなど、全く想像もしていなかった。そのことを思うと、彼女の心は少し感動した。

結婚したばかりの頃、福田隼人のすべては福田家によって管理されていた。もし彼が加藤恋に優しくすれば、福田家の人々は逆に彼女をより一層虐待したことだろう。しかし、夫である彼には何もできなかった。

ついに彼のキャリアにも転機が訪れた。過去の結婚記念日は、ほとんど祝うことができなかったので、今回は必ず取り戻したいと思っていた。

「恋、今夜はここで結婚5周年を祝いたいんだけど、いいかな？」

横を向いて加藤恋を見ると、彼女の目は輝いていた。

「嘘じゃないよね！」

福田隼人は笑いながら答えた。「もちろん嘘じゃない」

「セイソウリキと取引が成立したら、すぐにここを予約したんだ。信じられないなら、確認してもいいよ」

加藤恋は首を振った。結婚して5年、福田隼人は一度も彼女を騙ったことはなかった。まして、これは二人で初めて過ごす記念日なのだから。

「でも、そのウェディングドレス、とても綺麗だね」福田隼人は褒めながらも、少し探るような口調で言った。加藤恋がどうやってこんな高価なドレスを買えたのか、そしてあの宝飾品一式は恐らく数百万円はするだろうと。

加藤恋は笑って答えた。「これは母が結婚した時のものよ。母からの祝福みたいなものね」

二人がクリスタルガーデンに入ろうとした時、突然女性の声が聞こえてきた。「まぁ！これは誰かしら！加藤様がどうしてここに？」

福田隼人が振り向くと、若い男女が近づいてきているのが見えた。

男性は高級なオーダーメイドのスーツを着ており、身分の高さが窺えた。女性は全身ブランド物で、派手な化粧をしており、どこか俗っぽさがあり、しきりに隣の男性に寄り添っていた。

この女性のことを加藤恋はよく知っていた。学生時代に学生会で一緒に働いていた同級生の渡部琳だった。

確かに同じ学生会で働いていたが、担当部署が違い、二人の関係はあまり良くなかった。

この渡部琳は自惚れが強く、いつも加藤恋が特別な手段で上位に立ったと思い込み、嫉妬心が非常に強かった。