094 浅川家を調査する

「ははは、このお方はご存知ないかもしれませんが、ご紹介させていただきます。こちらは私の夫、浅川陽です」渡部琳は加藤恋の困惑した表情に気づき、得意げに隣の男性を引き寄せた。

続けて彼女は自慢げに言った。「彼は浜町の浅川家の御曹司で、将来の浅川家の後継者なんです。今日東京に来たばかりなのに、あなたに会えるなんて、本当に縁があるわね」

加藤恋は丁寧に頷いただけだったが、福田隼人の表情は少し憂鬱そうだった。結婚記念日を祝いに来たのに、こんな人たちに出会うとは思わなかった。

「そうそう、クリスタルガーデンの料金がどのくらいなのかしら。私の夫は数千円程度の安っぽい場所には行かないの。もし普通の席を予約したのなら、後で夫に格上げしてもらいましょうか」

渡部琳の得意げな態度を見て、福田隼人は軽く鼻を鳴らした。「私の予約した席で十分です。お気遣い無用です」