「我が病院でこんなことが起こるはずがない?お嬢さん、発言には責任を持ってください!」病室のドアが再び開かれた。「ここでデタラメを言うなんて!」
白髪の老人が入ってきて、非常に厳しい表情で加藤恋の先ほどの発言に不満げな様子だった。
もともと彼らは白血病患者の次の治療計画について会議をしていたのだが、高橋あきらが行ったきり戻ってこなかった。
「どういう状況だ?先ほど我が病院の医師の投薬で患者の症状が悪化したという話を聞いたが?」
高橋あきらは来訪者を見て急いで深呼吸をし、丁寧に挨拶をした。「林原院長、わざわざお越しいただき申し訳ありません。問題ありません、今協議中です。」
林原英明の名は東京で知らない人はいないほどだった。高橋あきらも喜色を浮かべた。この院長は世界的に有名な神醫で、医德が高く、醫術も卓越していた。彼が診た患者は最終的に全て完治すると言われ、治せない病気はないと言われていた。
それに加えて、林原英明は医学研究会の会長でもあり、最近は自分の後任となる院長を探していて、皆から尊敬されていた。
今回は白血病患者のために会議を開き、この数日は特に用事もないので患者の問題解決に当たっていた。そのため高橋あきらはこの数日、院長の前では寝食を忘れて患者のことばかり考えているふりをしていたが、まさか今日の院長の回診時に、このベッドの老人の容態が悪化するとは思わなかった。
「院長、事情はこうです!この患者の家族は医療トラブルを起こす疑いがあります。彼女が勝手に患者の治療を始めまして、ご存知の通りこの患者の容態は急激に悪化し、我々医師も手の施しようがなかったのですが、この家族が...」
高橋あきらは心を痛めるような表情で話し始め、さらに無力そうに首を振った。「まさかこの家族が強引に鍼治療を始め、さらに患者の血液機能が改善したと嘘をつくとは。私は責任感から急いで止めに入ったのです!」
「嘘つき!」部屋の中で幼い声が響いた。高橋あきらがでたらめな弁解を終えた後、東が焦った様子で口を開いた。「さっきあなたは酷いことばかり言ってたじゃないですか。それにおじいちゃんの病気を治せないって言ったのに、ママが治したら怒ったんです。これはおじいちゃんが良くなるのを望んでないってことですよね。」