二人の子供を連れて霊安室の片隅に来た。ここは確かに病院の死角で、人通りは少なく、たとえ誰かが来ても遠くから一目見るだけですぐに立ち去ってしまう。
加藤恋は東を起こし、二人の子供の服装を整えた。襟元から裾まで、まるで自分の子供のように細かく気を配った。
ほんの少しの出会いだったが、彼女の心はこの二人の子供たちに愛着を感じていた。特に西は今まで一言も話さなかったが、その小さな心の中に自分の存在があることは確かだと感じていた。
「ママ、私たちと一緒に行かないの?」東が哀れっぽく彼女を見つめ、西は苺の鉢を抱きしめながら、まるで彼女に視線を釘付けにするかのように見つめていた。
「坊や、お姉さんは必ずまた会いに来るからね。西、お姉さんは苺が実るのを見られないけど、きっといつか花が咲いて実がなるわ。東、これはお姉さんの電話番号よ。必ず電話してね。」
加藤恋は早めにメモを用意していた。子供たちが彼女に連絡を取りたくなった時のためだった。
東は涙目で加藤恋を見つめ、メモを大切そうにポケットにしまった。まるで失くすのを恐れているかのように。
二人の子供が突然彼女の胸に飛び込んできた。加藤恋は彼らを抱きしめ、瞬く間に目が潤んでしまった。
こんなに可愛い子供たちと、別れるのが辛かった。
背後から落ち着いた足音が聞こえ、振り向くと獅子のような目をした男と目が合った。
この人物は...何か危険な雰囲気を感じさせた。
反射的に二人の子供を後ろに隠した。このような人物がなぜここにいるのか、子供たちには関わらせたくなかった。
「お前は?」木村信彦は眉をひそめた。広告で見たことのある女性だ。自分に連絡してきたのは彼女か?
「あ、あなたは誰?言っておきますが、何か用があるなら私に向かってください。この子たちはただの子供です!彼らを困らせないで!」加藤恋は緊張して唾を飲み込み、東と西をしっかりと抱きしめた。この男が子供たちに何かするのではないかと心配だった。
木村信彦は眉をひそめて加藤恋を見た。この女は何を言っているのだ?
見知らぬ人に時間を無駄にする気はなく、東と西に手招きをした。
「お前たち、こっちに来い」
えっ?加藤恋は驚いて目を見開き、彼らの様子を見比べた。この人が...二人の保護者?