163 自称学生

林原英明の顔には誠意と敬意が満ちており、さらに敬語まで使っていた。加藤恋は常々このような正直な人を好んでいた。相手が目上の人でもあり、断るのも難しかった。この林原英明が本当に醫術を学んで人々の役に立ちたいと思っているのが分かった。彼からは強い使命感が感じられた。

たとえこの遊川顕が先ほど人を傷つけそうになったとしても、今の林原英明は前のことを気にせず、彼の命を第一に考えている。

このことに加藤恋は感動を覚えた。もし松本鶴が林原英明のような人に出会えば、きっと彼の前で腕前を披露したいと思うだろう!

そう考えると、加藤恋の心は揺らいだ。現代社会では、医学界でさえ、林原英明のように本心を保ち続けられる人は極めて少ない。

思い切って、林原英明にもう一度見せることにした。習得できるかどうかは、彼自身の理解力次第だ!

遊川家に顔を立てることにしよう。遊川家が何をしている家なのかは分からないが、友人を増やすことは損にはならない。必要な時に遊川家に福田家を助けてもらえるかもしれない。

「それでは、よく見ていてください。一度だけ行います。どんな原因で心臓に問題が起きても、この針法と指圧で解決できます。」

加藤恋の言葉とともに、彼女は遊川顕の側に近づいた。林原英明から渡された銀針を受け取り、施術を始めた。

おそらく遊川顕の心の中では加藤恋に触れられたくないと思っていただろうが、今は目が虚ろで言葉も発せない状態だった。

加藤恋の動きは非常に速く、林原英明は目が回るほどだった。皮膚の色と刺針の力加減から、林原英明は加藤恋の針の力加減と深さを判断することができた。

林原英明が反応する間もなく、加藤恋は既に何本もの針を打っていた!

「シュッ、シュッ、シュッ!」

銀針は加藤恋の手の中で空気を切る音を立て、針が刺さるにつれて、遊川顕の顔色はどんどん良くなり、唇の色も正常に戻っていった。

時間を確認し、加藤恋は両手を同時に動かし、それらの銀針を一気に抜き取り、遊川顕の脇に置いた。この時点で彼の体は完全に正常に戻っているようで、顔色も普通の人と変わらなかった。

林原英明は加藤恋の両手を見つめ、その残像を追いながら、心の中で大きな衝撃を受けていた。