福田隼人は、田中涼が彼をオフィスに連れて行き、ドアを閉めた瞬間に、彼女の目に宿った熱い期待に気付かなかった。
彼女は平然とオフィスのドアを内側から施錠し、その後で福田隼人を座るよう招いて詳しく話を聞くことにした。
「福田の坊っちゃんが今日、うちの浅川に何の用があるのかしら?」田中涼は少し落ち着かない様子で、袖をもみくちゃにしながら興奮した様子を見せた。
「田中社長、今回お伺いしたのは、ビジネスの話があってのことです。ご存知の通り、最近福田家は資金繰りに問題が生じていまして、可能であれば建材を先に納入していただけないでしょうか。」
「掛け売りですか...」田中涼は意味深な表情を浮かべた。「実は、テイセイの方針は福田の坊っちゃんもご存知かと思いますが、私どもは掛け売りはしておりませんし、材料の先納入もお断りしています。必ず前払いでお願いしております。」