212 演技の対決

「体調には気を付けてね。」両山健は顔を上げ、加藤恋を見つめながら、同じ質問を再度投げかけた。「あなたはどう思う?主役と脇役の関係について」

加藤恋は答えを既に用意していたかのように、率直に答えた。「主役はドラマの核心で、ストーリーを動かしていく存在です。脇役は脚本の肉付けとなり、物語の展開を支えています。多くの人は脇役は主役を引き立てる存在だと考えていますが、私はそうは思いません…」

彼女は真剣に話し続け、下の審査員の反応に全く気付いていなかった。審査員の質問が終わり、本当の勝負はここからだった。

「これから皆さんに、動作を示す慣用句や文章を提示します。その場で演技をしていただき、また特定のドラマや映画のシーンを演じていただくこともあります。」

「加藤恋さんと夏川晴海さん、一緒に画面のシーンを演じてください。」白井景はにこやかに手を上げた。竜川尚は彼を嫌そうな顔で見ていた。実は最初から二人を組ませるつもりはなかったのだが、白井景がそのほうが面白いと言い張ったため、二人を組ませることになったのだ。