そのカメラは常に加藤恋に向けられ、一瞬も離れることはなかった。
「海って本当に気持ちいいわね!」加藤恋は感嘆しながら言った。最近の出来事が多すぎたせいか、今まで抑えていた気持ちが急に解放され、それが加藤恋のインスピレーションを刺激したのかもしれない。
様々なポーズがカメラに収められ、一眼レフを持った若者は非常に満足そうに三脚を片付け、現場を後にした。
加藤恋が再び人々の中に戻ったとき、記者たちはすでに去り、撮影クルーと選考に残った出場者たちだけが残っていた。
「恋、さっきどこに行ってたの?探してたのよ!」東根瑞希は加藤恋を見つけると、焦った様子で声をかけた。かなり長い間探していたようだった。
「インタビューが終わって、ちょっと水遊びに行ってただけよ」加藤恋は気楽に答えた。
「あなたの神経の太さというか、純粋すぎるというか...夏川晴海がインタビューで何を言ったか知らないでしょう!このままじゃ危機管理が大変になりそうね」東根瑞希は溜息をつき、加藤恋が誰を怒らせたのか分からないと思った。
加藤恋は眉をひそめた。また自分を中傷するようなことを言ったのだろうか?
夏川晴海は今やオーディションの優勝候補で、多くの記者から注目を集めていた。記者が加藤恋との関係について尋ねると、夏川晴海は偽善的な笑みを浮かべた。
「今回、加藤恋さんの成績も良いと聞きましたが、夏川さんはどうお考えですか?」
「そうですね...私たち二人ともRCのモデルで、国際ブランドの顔として活動していますから。最近お会いすると恋はいつも慌ただしく去って行かれますし、トレーニング会場でもなかなかお会いできない。すれ違いが多いのかもしれません」夏川晴海の言葉の裏には、今の加藤恋は自分を妬んでいて、おそらく福田家の地位を利用して、トレーニング会場を抜け出しているという暗示が込められていた。
「では、この大会で優勝できる可能性についてはどうお考えですか?」記者は非常に鋭い質問を投げかけた。