「竜川尚!竜川尚でしょう!ここを見て、この二人は誰?オーディションの参加者?加藤恋だと思うわ、ほら、ここ!」パパラッチは自分の正体がばれたことに気づいたようで、三人に向かって叫んだ。
これは大スクープだ!
参加者と審査員が密会、しかも相手が加藤恋とは。第一ラウンドで二人は言い争いをしていたし、ネットユーザーからはある意味ライバル関係とみなされていた。
堂々と尾行するだけでなく、発見された後も挑発的な態度を取り、非常に悪質で、口調も軽薄だった。東根瑞希はそのパパラッチを見つめながら、両手の血管が浮き出るほど怒りを抑えていた。
竜川尚は無表情でパパラッチを見つめた。彼はハイエナのようにつきまとうこの連中に慣れていた。業界には彼のミスや不注意を待ち構えている人々が多すぎて、そうすれば彼らは飛びかかって噛みつく機会を得られるのだ。
芸能界とは、はっきり言えば弱肉強食の動物の世界に他ならない!
「私たち、どうしたら...」加藤恋が口を開こうとした時、竜川尚は直ちにジャケットを脱いで彼女の頭にかぶせた。
「ここで隠れていて。もう注目の的にはならないように。」もしこいつらが簡単に対処できると思っているなら、それは甘すぎる。まして...
「よこしな!」東根瑞希は一歩前に出て、パパラッチのカメラを奪い取り、地面に叩きつけた。
レンズが割れる音を聞いて、パパラッチは冷や汗を流した。「私のカメラ...あなた何者だ?どうして私の物を壊すんだ?」
「この業界で働いているのに私を知らないの?その犬の目をよく開けて見なさい!私は温井家の人間よ。私に向かって盗撮するなんて図々しいわね。」東根瑞希の声は冷たく、パパラッチに小切手を投げつけた。
「これは1万円。あなたのカメラの代金として十分でしょう。今日のことが漏れたら、この業界で生きていけなくしてあげるわ。」
パパラッチは金を手に取り、東根瑞希を上から下まで見つめた。「あなたは...温井家の温井詩花さん?このオーディションの参加者でもありますよね!」