243 真の身分

「竜川尚!竜川尚でしょう!ここを見て、この二人は誰?オーディションの参加者?加藤恋だと思うわ、ほら、ここ!」パパラッチは自分の正体がばれたことに気づいたようで、三人に向かって叫んだ。

これは大スクープだ!

参加者と審査員が密会、しかも相手が加藤恋とは。第一ラウンドで二人は言い争いをしていたし、ネットユーザーからはある意味ライバル関係とみなされていた。

堂々と尾行するだけでなく、発見された後も挑発的な態度を取り、非常に悪質で、口調も軽薄だった。東根瑞希はそのパパラッチを見つめながら、両手の血管が浮き出るほど怒りを抑えていた。

竜川尚は無表情でパパラッチを見つめた。彼はハイエナのようにつきまとうこの連中に慣れていた。業界には彼のミスや不注意を待ち構えている人々が多すぎて、そうすれば彼らは飛びかかって噛みつく機会を得られるのだ。