「その子の面倒を見ていてくれ。この野郎を先に外に連れ出す」竜川尚は慌てふためく葉野言葉を一瞥し、急いでその中年男を引きずり出した。
彼女が「聖母の賛歌」を歌っていた時の真摯で純粋な姿を思い出し、竜川尚はこんな馬鹿者がそんな純粋な少女を汚そうとしたことに我慢できなかった。
「ありがとう...」竜川尚が自分のために立ち回ってくれたことを悟ったのか、葉野言葉は小さな声で言った。感情は少し落ち着いたものの、まだ非常に怯えた様子で、露出した部分を必死に隠しながら、感謝の眼差しで加藤恋と温井詩花を見つめていた。
もう自分の人生はこれまでだと思っていたのに、このオーディションのおかげで二人の友達ができるなんて。
でも、どうして彼らが竜川尚と一緒にいるんだろう?
葉野言葉の心に疑問が浮かんだが、加藤恋の立場を考えると、有名人を何人か知っているのも不思議ではないかもしれない!