一方、福田鐵は息子を見つめ、愕然としていた。表向きは自分と同じ立場で、すべては福田家のためだと言っていた息子が、裏では株式を売り払い、密かに逃げる準備をしていたなんて、想像もできなかった!
他の者には株式の売却を禁じているのに、自分の息子がこんな真似をしているなんて。これが外に漏れでもしたら、福田家は本当に終わりだ。
「違います...違うんです!お父さん、お婆様...私は...私はそんなことは...」
福田元は震えながら、唐沢行を見た途端、理性を失い、突然彼に飛びかかった。「唐沢、てめえ畜生野郎!これは全部お前が仕組んだんだろう!わざと罠にはめやがって!お前も畜生だ!こんなに信頼してたのに!福田隼人がどれだけの見返りをくれたんだ、あいつのためにここまでやるなんて!」
その行動を見ても、唐沢行は少しも動揺を見せず、むしろ直接彼の足を蹴り飛ばし、地面に倒れ込ませた。狂ったように暴れる福田元を冷ややかに見下ろし、表情一つ変えることなく、まるで眼中にないかのようだった。
別荘内の全員が呆然と立ち尽くし、何が起きているのか理解できなかった。
ようやく我に返った福田のお婆様が口を開いた。「唐沢社長、きっとこれは誤解があるのでしょう。株式は買い戻させていただきます。セイソウリキと我が福田家は常々良好な関係を保ってきました。どうか寛大な処置をお願いいたします。この子の軽率な行動をお許しください。それと、この別荘の件ですが...」
福田のお婆様は加藤恋の方を見た。どう転んでも別荘は手に入れなければならない。売却するにしても自分たちが住むにしても、どちらにしても良い選択肢だった。
「須田宏、元がもうすぐ心と結婚するけど、この件についてどう思う?」福田のお婆様は突然須田宏に向かって、非常に答えづらい質問を投げかけた。
「えっと...それは良いことですね...」須田宏は一瞬戸惑った後、笑みを浮かべて答えた。「秋山家も名門ですから、秋山家と縁組みができれば、我が福田家の発展にとっても良いことです。」
「良いことは良いことだけど、今の福田家の状況では、たとえ元に気持ちがあっても、私には申し出る顔がないわ。」