それに、彼女は人生の大半を生きてきたのに、こんな豪華な別荘に住むことができなかった。今や、この別荘が孫の嫁の手にあるのだから、何としても奪い取って楽しまなければならない。大切な息子でさえこんな別荘に住めなかったのに、なぜ気に入らない娘が住んでいいのだろうか?
だから、どうしても別荘を引き渡させなければならない。最悪の場合、古い家も売って、福田家の穴埋めにできるだろう。
「おい、お婆さん、しっかりしなさいよ。ここは加藤恋の家なのよ。福田隼人と両親が住まわせてもらってるだけでも十分なのに、奪おうだなんて、人間のすることじゃないでしょう?」
温井詩花は、ようやく何が起きているのか理解した。そして、加藤恋がずっとどれほど苦労してきたかも分かった。友人として、今立ち上がらなければ、いつ立ち上がるというのだろう。