327 強制退場

棄権?加藤恋は信じられない思いで携帯を手に取り、メッセージを見つめた。検索数は下がってきたと聞いていたのに、なぜ突然……

【こんな人がいるなんて想像もしなかった。金持ちに寄生して他人の夢を奪うなんて】

【問題のある芸能人は早く消えろ!】

【両山先生が可哀想、こんな人と組まされるなんて】

【棄権して。このまま続けたら、数日後にもっとひどい写真が出てきて、私たちが馬鹿を見るわ】

【ここまで来られた理由が分かった。他の落選した選手たちが巻き込まれた災難だわ】

……

「このまま非難の声が高まり続けると、制作側としても対応が難しくなります。それに、このまま続けても精神的にも身体的にも耐えられないかもしれません」今まで黙っていた石田監督がついに口を開いた。

加藤恋は一瞬で全てを理解したような気がした。たとえ自分に何の非もなくても、秋山花と高杉川は簡単には許してくれないだろう。彼らは自分がプレッシャーに負けて自主的に棄権することを望んでいる。そうすれば、あの時の出来事が大衆の注目を集めることもないのだから。

「制作側の心配、ありがとうございます。でも、この件は私自身で対処させていただきます。確かに一部のファンの感情を傷つけてしまい、この非難も受け入れます。でも、『望花』のオーディションの舞台に立つことは私の夢です。簡単には諦めません」加藤恋は言いながら、冷ややかな目で秋山花を見た。

石田監督は少し驚いた……この加藤恋は自分の暗示を理解していないのだろうか?

「そういえば、彼女は大会中に盗作、口パク、いじめ、代筆、情報漏洩などの行為はしていないよね?」横に座っていた竜川尚も我慢できずに口を開いた。

「そ、それは確かにありません……」石田監督は緊張して答えた。

「彼女はあの人の立場を利用して、自分のためにステマをしたり、観客や審査員を買収して贔屓してもらったりしていないよね?」

「もちろん……ありません」石田監督は心の中で呟いた。むしろ彼女の映像をカットし、投票数を低く見せるように要求されていたのに。