思いがけず小瀧輝が急に強気になったので、高杉川も無駄話をせず、直接小切手を取り出して彼の前に投げた。「この件は部外者が関わる必要はない。投稿を削除するためにいくら必要か、数字を書けばいい。さもなければ法廷で会おう」
小切手は小瀧輝の足元に落ちたが、彼はちらりと見ただけで背を向けて立ち去った。
「高杉社長、もう一つの輝く新星を潰さないでください。そんなに無駄話をするくらいなら、直接召喚状を送ってください」
小瀧輝の後ろ姿を見ながら、高杉川は陰気に言った。「お前、狂ったのか?これだけ年月が経って、今更あいつらと組んで俺に噛みつこうというのか?もう遅すぎる!一体何がしたいんだ?」
小瀧輝は突然足を止め、淡々と口を開いた。「おそらく、私が望むのは当然の報いだけですよ」
当時、向井栞の後輩として、彼は向井栞のことをよく理解していた。彼女は好きなことにしか時間を使わない人だと知っていた。しかし、彼は向井栞を陥れた一人として濡れ衣を着せられた。今では失うものは何もないので、思い切って認めることにした。それも一つの善行だと考えた。
東皇を出ると、高級車が既に入り口に停まっていた。若い男性が車から降りてきて、「小瀧先生?会長がお話したいことがあるそうです。車にお乗りいただけますか」
若い男性を軽く見て、車の中も確認すると、そこにも若い男性らしき人物がいた。小瀧輝は記憶を探ったが、このような人物は見覚えがなかった。
「ご心配なく、悪意はありません。ただいくつか質問させていただきたいだけです。ご協力をお願いします」若い男性が手を伸ばし、彼の手首を掴んだ。小瀧輝はその力を感じ、この人物が普通の人間ではないことを悟った。そのため、もう抵抗せずに車に乗り込んだ。
……
加藤恋が練習室を出た時、廊下が非常に静かだということに気付いた。各練習室の明かりは、夜から朝まで明るく照らされていた。今回の収録後、決勝に進めるのは3人だけなので、皆必死になって自分のステージの練習をしていた。そのため、加藤恋のように練習室に住み着いている人も少なくなかった。
すぐに本番の公演となり、今回の司会者は竜川尚に変更されていた。
「こんにちは、NEOの竜川尚です。本日の司会を務めさせていただきます。『望花』キャスティングオーディションの最終順位を発表させていただきます……」