両山健はこのような積極的で明るい人を嫌いではなく、ましてや自分の良き師であり友人の子供となれば尚更だった。しかし、接触を重ねるにつれて、加藤恋は実はメディアが書いているような頭の悪い人間ではなく、むしろとても頭の良い人間だということが分かってきた。
「編曲、作詞、レコーディングを新しくして、コンテスト用の新曲を作ったのね。残りの小道具と衣装は私が用意するわ」
加藤恋は両山健を感謝の眼差しで見つめた。二人の付き合いは短かったが、両山健は自分のことをよく理解してくれていると確信できた。
「でも、こんなに準備が大変なのに、次のラウンドで脱落することを心配しないの?そうなったら、全ての努力が無駄になってしまうわ」
両山健はここで少し心配になった。番組側から高橋綾子と温井詩花の評価を少し高めにするよう特別に言われていたからだ。そのため、何か裏で動きがあるのは確実だった。そう考えると、両山健は加藤恋の今後の展開が心配でならなかった。