「秋、秋山先生?」葉野言葉は小声で呼びかけ、秋山花を見つめる目は憧れに満ちていた。秋山先生は近くで見るとさらに美しかった。
「中で話しましょう~」葉野言葉の部屋だったにもかかわらず、秋山花は女王のような威厳を漂わせていて、まるでここが彼女の部屋であるかのようだった。
「あなたはこの期の参加者の中でも目立つ存在よ。でも女の子は自分を綺麗に磨くことを学ばないといけないわ。あなたの口紅が少なすぎるから、これをあげるわ。買った時にあなたに似合うと思って。それとこのヘアピンも、付けたらきっと可愛いわ。」
部屋に入るなり秋山花は葉野言葉にアドバイスを始め、さらに彼女の上着をプリーツスカートの中に入れてあげた。「あなたは背が低いからこういう着こなしが似合うわ。脚が長く見えるし、肌も白いから、とても綺麗よ。」
「あ、ありがとうございます、秋山先生……これ、きっと高価なものだと思います……」葉野言葉は顔を真っ赤にした。彼女と秋山花の接点は少なかったのに、秋山先生がこんなにも彼女のことを気にかけ、親切にしてくれるなんて思いもしなかった。
「あなたは視聴者投票で選ばれたのよ。人気がとても高いから、自分の長所を活かすことを学ばないと。そういえば加藤恋と東根瑞希は?あなたたち仲が良かったわよね。この数日の休みの間、一緒にいなかったの?」秋山花は笑みを浮かべながら尋ねた。無害そうに見えたが、その目には相手を観察し、分析する色が宿っていた。
「私は……」葉野言葉は何を言えばいいのか分からなかった。この期間、お金を稼ぐために外に出ていたので、二人が何をしているのか知らなかったし、最近の様子なんて、二人が彼女に報告する必要もなかった。
「そうそう、東根瑞希の本名は温井詩花よ。彼女のお母さんは有名なゴシップライターの女王で、業界では一流の情報通なの。今は自分のメディア会社も持っているわ。今回のオーディションでも、彼女のお母さんは番組側と話をつけていて、少なくともベスト3には入れるようになっているの。このこと、知ってた?」
秋山花は最初、葉野言葉を試そうと思っていたが、彼女の様子を見て、この女の子には何も策を弄する必要がないことが分かった。