313 離間を図る

「言葉ちゃん、昨日つけていたあの可愛いヘアピン、今日はどうしたの?」加藤恋は自分の頭を指さしながら葉野言葉の方を見た。

秋山花のことを思い出し、葉野言葉は一瞬固まった後、笑みを浮かべて答えた。「あれね、誰かにもらったものだけど、私には全然似合わないと思って、返しちゃったの」

「えー、そんなことないよ!すっごく可愛かったのに!」温井詩花は親しげに葉野言葉を抱きしめた。彼女がこういう小柄で柔らかい感じの子が大好きなのは周知の事実だった。

「あの子がそんな人だって誰も知らないのよ!昨日は本当に腹が立ったわ。私に言わせれば、大会を辞退するか、公に謝罪するべきよ。ひどすぎる。制作側もよくあの子を残しておくわね」

安藤奈々は一人で端に寄った。今や番組で孤立しているのは彼女になっていた。どうすればいいのか分からなくなっていた。