360 裏取引

辺りを見回しても、加藤恋は誰も見つけられなかったが、周りの人々が自然と後ろに下がり、ダンスフロアには二組だけが残されていることに気づかなかった。明らかに、その二組のダンスが特に目を引いていたのだ。

加藤恋は、先ほどのタキシード仮面も残っていることに気づいた。きっと彼はダンスが上手なのだろう。あの時承諾しなくて良かった。もし承諾していたら、今頃彼はあの場所に立っていないはずだ。

そのとき、温井詩花が酔った様子で加藤恋の傍にふらふらと現れた。強い酒の匂いを漂わせながら、「恋ちゃん、どうしてここに立ってるの?ずっと探してたのよ。私の携帯、あなたが持ってない?あれ?もう決まったの?」

「今夜のダンスクイーンを決める戦いは非常に白熱していますね。果たして勝者は誰になるのでしょうか!」司会者も興奮した様子で、まだダンスを続けている一組に目を凝らしていた。