375 偽善者のふり

福田隼人と一緒に車から降りた男は木野登と言い、まさに今回の二人の提携相手だった。

そして地面に倒れているお年寄りは彼の実の父親だった。

「父は清廉潔白な人生を送ってきました。東京小学校の校長でしたが、贅沢な生活など一切せず、むしろ経済的に恵まれない子供たちに寄付をしていたほどです。」

木野登は激しく動揺していた。入院中の父を見舞いに来たのに、こんな状況に遭遇するとは思いもよらなかった。

「この野郎!誰を追い出すつもりだ?」木野登は全身の力を込めて、藤田彰の顔を思い切り殴った。

顔を押さえながら、藤田彰が呆然としているうちに、傍らにいた藤田華が怒り出した。「この役立たず!あなたたち全員役立たずね!よくも私のパパを殴るなんて。」

木野登は冷笑いながら言った。「殴ってどうした?言っておくが、今後二度と藤田家とは取引しない。早く父に謝れ。」

「私は女性は殴らない。お嬢さん、どいてくれないか。医者に父の救命処置をしてもらう時間が必要だ。」木野登は目の前の藤田華を完全に無視し、山田駿を見た。

脇に立っていた山田駿は周りの視線を避けながらおどおどしていた。加藤恋は福田隼人の助けを借りて立ち上がることができた。彼女は山田駿と藤田彰が共謀している様子を見て、直接口を開いた。「あなたたちはさっきからずっとこのお年寄りをホームレスだと思い込んで、治療を渋り、さらには見殺しにしようとしていたのね!」

「そうだったのか?医の倫理も何もないな。」木野登は歯ぎしりしながら立ち上がった。今や藤田彰は先ほどの何も恐れない様子は消え失せていた。

彼は藤田彰が何度も父を傷つけたことに我慢できず、もう一発パンチを繰り出した。藤田彰の顔は大きく腫れ上がった。

「き、木野社長、これはどういう...」明らかに藤田彰も木野登のことを認識していたが、このような老人が木野登のような大物社長と知り合いだとは到底信じられなかった。

「藤田、お前は今後二度と金を稼げなくなる。必ずすべての企業にお前との取引を断らせてやる!」

「本当に木野社長なんですか?」藤田彰はまだ半信半疑だった。こんなことがあるはずがない。突然現れたホームレスのような老人が木野社長の父親だなんて!