376 怒りと恥辱

「必要ありません。自分のレベルがどの程度の医者なのか考えてもみなさい。私の父を治療する資格なんてありませんよ。今すぐ中間院長に連絡して、手術室を確保してもらいます」

木野登が電話をかけ始めると、数言葉を交わしただけで山田駿の冷や汗が服を濡らすほどになっていた。

「ご説明させてください。この社長様、私はさっきまで人に唆されていただけなんです。全て藤田彰のせいです!彼がいなければ、とっくにこのお年寄りを中に入れていたはずです」

山田駿の戯言を聞きながら、加藤恋は福田隼人の支えを借りて立ち上がった。

「最初からこのお年寄りは心筋梗塞だと言っていました。すぐに手術が必要なのに、あなたたちは時間を無駄にしていた。ただ身元不明というだけの理由で」

「妻よ、病室に戻ろう。こんな連中と話す価値はない。木野さん、提携の件は、お父様の容態が落ち着いてから改めて詳しく話し合いましょう」福田隼人は加藤恋の蒼白な顔を見て、彼女を休ませたいと思った。