温井康彦は高熱があったものの、優しい手が自分に触れているのを感じることができた。彼はその手を軽く握り、その冷たい温度を感じ取った。
加藤恋の手際に、東は呆気にとられた。彼らの若旦那は人に触れることは滅多になかったが、今は自ら加藤恋の手を握っている。そしてこの加藤恋は?
感謝するどころか、すぐにその手を振りほどき、彼らの若旦那の体のあちこちを押さえた。加藤恋が何をしているのかわからなかったが、東は温井康彦の出血箇所が短時間で凝血していることに驚いた。
それに加藤恋の縫合の技術も相当なもののようで、このような状況でも蝶結びまでできるなんて……
実は東は知らなかったが、加藤恋の心の中はパニック状態だった。彼女は実際には縫合をしたことがなく、縫合は松本鶴が今月教えることになっていたため、正式な学習の前にただ縫合の動画を何度も見ただけだったのだ!