352 温井詩花の兄

それだけでなく、福田家が確実に没落するだろうと誰もが知っていた時、福田のお婆様がショックで脳卒中を起こして入院したというニュースが流れた。

福田嘉はそのニュースを聞いて気を失いそうになったが、よく考えてみると、自分の心に何の動揺もないことに気づいた。

「私はやっと母がなぜこんな人生を送ることになったのか分かったわ……父が生きていた時から、母は父が自分を裏切ったと思い込んで、家のものを十分に任せてくれなかったと思い込んでいた。だから母は父に対していつも恨みを持っていたの。」

「そして母は一生、人を支配することばかり考えていた。今回のことは自業自得よ。同情する価値なんてないわ。おそらくこの経験を通じて、やっと自分の過ちに気づくかもしれない……」

加藤恋は、虚栄心に満ちた混乱した人生を送ってきた福田嘉が、この時になって母親の欠点を見抜けるとは思わなかった。

家族が一息ついている間、福田隼人は自社の上場準備を進めていた。最初は福田家の名を借りてセイソウリキと協力し、家族の日常的な支出を維持できればと考えていただけだったが、セイソウリキは彼に機会を与えただけでなく、さらなる協力の道を開いてくれた。

「最初は大スターになって家のために稼いでくれると思っていたけど、今となっては全く期待できないわね。でも、あなたがセイソウリキグループの会長を救ったって、一体どういうこと?」

福田嘉は加藤恋を見て、まるで鉄が鋼にならないことを嘆くかのように言った。バックグラウンドのない嫁には相変わらず不満だったが、今は彼女の別荘に住んでいて、家が彼女の名義になれば、この加藤恋は自分の思い通りになるはずだと考えていた。

福田嘉を無視して、加藤恋は時計を確認し、松本鶴から教わった新しい内容を勉強するために階段を上ろうとした時、突然温井詩花から電話がかかってきた。「恋……恋……助けて、お兄ちゃんが……お兄ちゃんが……」

「今どこにいるの?」加藤恋の声は沈んだ。そして福田嘉と須田宏の呼び声を無視して、すぐに走り出した。

今は家の正門の前に大勢の人がいたので、加藤恋は当然正門から出なかった。

温井詩花から送られてきた住所に急いで向かったが、そこが古い市街地の、しかも古びた小さな診療所だったことに加藤恋は驚いた。