394 敵の手に落ちる

齋藤秘書の名前は齋藤武史で、その男と一時的に格闘を繰り広げていた。加藤恋は秋山心を大きな木の後ろに引っ張って隠れた。今の齋藤武史は苦痛に満ちた表情を浮かべ、太ももから血が流れ始めていた。

「接近戦の腕前は確かにすごいな。だが誰が俺とやり合うって言った?銃を持っているのに使わないとは、俺を馬鹿にしているのか?」男は嘲笑うような口調で言った。銃で撃たれても齋藤武史は倒れなかった。彼の銃は車の座席横の隠し箱にあったが、先ほど車から降りた時からその男に見張られていて、取り出す機会がなかった。

加藤恋は齋藤武史の傷に気づき、心配そうに近くの蔦を引っ張って、彼の怪我した部分を縛る機会を探っていた。

齋藤武史はその男に押され続けて後退を余儀なくされていたが、突然襟首を掴まれ、加藤恋に木の後ろへと引っ張られた。直後に銃声が響き、彼が先ほど立っていた場所に男の弾丸が命中した。