「私は……野外の廃墟で大きな撮影をしたいんです。福田隼人さんがここに適した場所があると言っていて、ちょうど仕事の話があるので、齋藤秘書に周辺を案内してもらって、ロケハンをしているところです」
加藤恋は齋藤秘書を一瞥した。秋山心の前で自分の本当の身分を明かしたくなかった。
「秋山課長がなぜここに?」齋藤秘書も思わず尋ねた。
秋山心は怒りの色を浮かべながら言った。「会社から営業に行くように言われて、相手の客が工場エリアで会いたいと言ったんです。でも客に会う前にタイヤがパンクして、しかも3本も同時に!何て言っていいか分かりません!」
加藤恋はその話を聞いて眉をひそめた。どうしてこんなことに?
確かにここには石ころや釘、有刺鉄線といった尖ったものが多いけれど、どうして3本のタイヤが同時にパンクするなんてことが?