388 背後の師匠

「それがどうした?小瀧先生の体調は私が一番よく知っているわ。病気なんてあるはずがないでしょう?結局、あなたの医術が未熟で間違った診断をしただけよ!」

「そうですか?」加藤恋は小瀧武を見つめ、微笑んで手を差し出した。「小瀧先生、お手数ですが、私に脈を診させていただけませんか?中村医師も一緒にどうぞ」

小瀧武は中村亜梨香の様子を見て、首を振りながら溜息をついた。「焦りすぎては大成しない。自分で脈を診てみなさい。あなたが見誤ったのか、それとも奥様が間違っているのか確かめなさい」

「これは...」中村亜梨香は自分が間違えるとは全く思っていなかった。彼女が人の様子を見ただけで病状がわかることは誰もが知っていた。しかも小瀧先生の症状は最も見分けやすいはずだった。どうして見誤るはずがあろうか?

二人の女性が小瀧武の前に進み出て、手を伸ばして脈を取った。中村亜梨香は即座に固まり、顔色が悪くなり、木野登を見る目にも戸惑いが浮かんだ。

小瀧先生には確かに腰と膝の痛みがあったのだ。しかし先ほど見た小瀧先生の外見は血色が良く、全く病人には見えなかった。

もしかして小瀧先生は意図的に健康な様子を装って、自分の判断を誤らせたのだろうか?

「私はただいくつかのツボを押さえて、顔色を艶やかに見せただけだ。こんな小さな工夫さえ見抜けないとは」小瀧武の声には失望が滲んでいた。

彼が予想外だったのは、加藤恋が一目で見抜いたことだった。これは彼女の医術が中村亜梨香をはるかに超えており、自分と肩を並べる実力があることを示している。

しかし、彼女はまだこんなに若いのに、どうしてこれほどの医術を持っているのだろうか?

「だからあなたのレベルはまだまだということよ」加藤恋は中村亜梨香を見て淡々と笑いながら言った。

「あなた!」中村亜梨香は驚愕した。加藤恋のあからさまな皮肉に、誰の目にも加藤恋の意図は明らかだった。中村亜梨香の医術は単に劣っているどころか、はるかに及ばないということを。

しかし加藤恋は依然として彼女の面子を保ってやっていた。

小瀧武は加藤恋を見つめた。確かに自分は意図的に本当の体調を隠していたが、加藤恋にはそれが見抜かれていた。

「奥様、私ごときが伺うのも僭越ですが、あなたの師匠は伝説の'生死の関'松本家の方なのでしょうか?」