第397話 正体露見

秋山心が部屋を出て行くと、齋藤武史は加藤恋のそばに寄り、低い声で話し始めた。「奥様と同じように、私にも他人には言えない身分があります。奥様は……」

「安心してください。でも、あなたはあんなに射撃が上手なのに、なぜセイソウリキの秘書になろうと思ったんですか?才能の無駄遣いですね」加藤恋は冗談めかして言った。

「あなたと同じですよ。あなたはあれほど頭が良いのに、なぜセイソウリキの小さな社長に甘んじているんですか?さらには福田家で虐げられながら主婦として生活しているんですか」

加藤恋は齋藤武史を一瞥した後、布団にくるまり、それ以上返事をしなかった。

加藤恋は最近、どうしたことか頻繁に病院に出入りしていた。

齋藤武史の身分が並々ならぬものだと分かっていても、セイソウリキや他の人々に危害を加えるわけではないので、加藤恋は当然何もしようとは思わなかった。