加藤恋が立ち去ろうとするのを見て、齋藤武史は無理して起き上がった。「ちょっと待って!」
「今はそんな大きな動きをしない方がいいわ……」加藤恋が振り返って齋藤武史を見ると、彼はオフィスのソファークッションのジッパーを開けていた。
金属のジッパーの音が加藤恋の耳元を過ぎ去り、彼女は齋藤武史の向かいに立ったまま思わず眉をひそめた。なぜか奇妙な感覚に襲われ、その場から逃げ出したい気持ちと、何か真実が明かされそうな予感に戸惑いを感じていた。
齋藤武史は茶封筒を取り出し、ソファーの前のテーブルに向かって振った。
テーブルの上には数枚の写真が散らばった。
「これらを見てみる気はないかな」齋藤武史は淡々と言った。
加藤恋は疑問を投げかけた。「これらは何なの?」
「福田家に関するもので、あなたのお母さんとも関係がある」