413 齋藤武史が重傷を負う

そんな危険な場所に行ったら、帰って来られるかどうかも分からない。それに、彼女はそんな確実性のないことは決してしない。木村信彦のような人物とは関わらない方がいい。

加藤恋は心の中の思いを振り払い、先に休むことにした。

翌朝早く、加藤恋はリビングの散らかり具合と、泥酔している福田嘉と須田透を見て、すぐに掃除を頼んだ。

何も言わずにセイソウリキに直行し、社長室に向かった。まだ入室する前に、濃い血の匂いが漂ってきた。

彼女は警戒しながら社長室に入った。もしかして木村信彦のやつが昨夜、手を出したのか?

慎重にドアを開けると、齋藤武史が額に汗を浮かべ、目を固く閉じている姿が目に入った。

彼の顔色は青ざめ、全身が止めどなく震えていた。

加藤恋は大きく驚いた。齋藤武史が彼女の社長室にいるとは思いもよらなかった。急いで手を伸ばすと、彼の体は熱く、ほぼ意識不明の状態だった。それだけでなく、齋藤武史はすでに痙攣の兆候を見せており、加藤恋は急いで彼を支え上げたが、両手は瞬時に血で染まった。

現在の彼の状態では、長くは持たないだろう。齋藤武史は命の危険があるかもしれない。

何とか齋藤武史を支え上げ、加藤恋は素早く彼の傷の位置を見つけた。一体どんな人物と遭遇したのか、体に二箇所も銃弾を受けていた。

加藤恋はハサミを取り、齋藤武史の服を切り開こうとすると、彼は眉をひそめ、苦痛に満ちた表情を浮かべた。

乾いた唇と、額から流れる冷や汗を見て、加藤恋は困り果てた。齋藤武史の傷は放っておけないが、今の状態では手術もできそうにない。

しかし、これ以上治療を遅らせれば、齋藤武史は失血過多で腕が不自由になってしまう。そう考えた加藤恋は深く息を吸い、齋藤武史に無理やり水を飲ませ、その後、彼がどんなに苦しもうと、きれいな水で傷口を洗い流した。

齋藤武史は顔を真っ赤にし、異常なほど苦しそうな表情を浮かべていたが、加藤恋は決意を固めたかのように、弾丸の摘出作業を始めた。

確実を期すため、加藤恋も十二分の注意を払い、齋藤武史を平らに寝かせ、社長室に置いてある医療品を取り出し、齋藤武史の服を優しく破り、水で湿らせたガーゼで汚れた血を拭き取った。

全てを終えた後、加藤恋は意識不明の齋藤武史を見つめ、状況がここまで悪化しているとは思わなかった。