403 次々と契約解除

この時の夏川晴海は、まさに道化師のようだった。しばらくして、歯を食いしばりながらようやく一言を絞り出した。「彼女は私を潰そうとしているのに、なぜ私が謝らなければならないの？私は何も悪くない！」

「私がオーディションに参加したことを知ってから、あなたは私に対して敵対的で、決勝戦で半月も目が見えなくなるほど妨害し、枕営業で私の順位を奪った。私はずっと黙っていたのに、今になってあなたのスキャンダルが暴露されたら、私に噛みついてくるの？」

加藤恋は夏川晴海を見つめながら、おそらく唐沢行がこの事情を知って、自分を支持しようとしているのだろうと推測した。

「もし謝罪するなら、このビデオは公開しないわ。でも、まだ分かろうとしないなら、私も容赦しないわよ」加藤恋は冷静に自分の考えを伝えた。

事務所の外は人だかりで、多くの記者たちが肉の匂いを嗅ぎつけた犬のように夏川晴海の後を追い、二人の人気女優の対立劇を見ようとしていた。

「自分の今の立場も分からないの？チャンスを与えられているのに、それを活かせないの？加藤恋を懐柔できれば復帰のチャンスもあるのに。それに、あなたが狂ったように突っかかっていかなければ、会社も公式に対応できたかもしれない。でも、あなたは完全に相手を敵に回してしまった。エイベックスからも全く連絡がない。自分で蒔いた種は自分で刈り取りなさい。ちょうど契約解除の手続きにもサインしたことだし、後は自分でなんとかしなさい！」

電話の向こうのマネージャーはそう言い残すと、夏川晴海がどれだけ叫んでコールバックしても誰も応答しなかった。

彼女の目に一瞬の動揺が見えたが、まだ少しの期待を持っていた。結局、芸能界で何年も生きてきたのだから、きっと助けてくれる人がいるはずだと。

「何を騒いでいるんですか？」夏川梅がファッションショーのディレクターと一緒にオフィスから出てきて、騒がしい様子を見た。ディレクターは一目で夏川晴海に気付くと、「ここにいたとは。正式にお伝えしますが、来月のショーには来なくて結構です」と言った。

「何ですって？」夏川晴海は興奮してそのディレクターを見つめた。「忘れたんですか？私はショーのトップバッターですよ。勝手にクビにはできないはずです」

「我々は汚点のある芸能人は絶対に起用しません」