503 支払い失敗

「ええ、さっき遊川の爺さんからもらった28万円のカードがここにあるから、私が直接支払いに行きます」加藤恋は頷いて、病室を出ようとした。

福田嘉はその言葉を聞いて即座に慌てだした。「何?カード?どんなカード?どこのカード?」

「遊川の爺さんが私に上場記念として贈ってくれた祝い金です」福田隼人は淡々と答えた。

「そんな良いことがあったの?」福田嘉は突然興奮し始めた。誰が20万円も節約できると思っただろうか!

「先生、今回の治療費は全部でいくらですか?」加藤恋は主治医に尋ねた。

「実は患者さんの内傷はほぼ治っていて、残りは外傷と看護だけです。そんなにかかりません。1、2万円あれば十分です」

この言葉を聞いて、福田嘉の目が動き、すぐに心が動いた。28万円のカードなのに!26万円も残る!

そう考えると、福田嘉は加藤恋に手を伸ばし、命令口調で言った。「そのカードを持っているの?支払いは私に任せて!カードを渡しなさい」

加藤恋は福田嘉がまだ残金に執着していることに驚き、「お母さん、ここでお父さんの付き添いをしていてください。支払いは私がしますから」と言った。

福田嘉は加藤恋を険しい目つきで睨みつけ、怒って言った。「なんでそんなに口答えするの?私が行くって言ったら私が行くの。カードを渡して、病室で手伝いなさい!」

加藤恋は非常に困った様子で肩をすくめ、ポケットからカードを取り出して福田嘉に渡した。「お母さん、これがそのカードです」

福田嘉は非常に興奮してカードを受け取り、喜々として支払い場所へ走って行った。彼女の様子を見て、加藤恋はようやく福田嘉がお金を狙っていたことに気付き、困ったように首を振った。

「私もおばさんと一緒に行きます」ずっと声を出せなかった雲原静がようやく口を開き、急いで戸口へ向かって福田嘉の後を追った。

福田隼人と加藤恋は何も言わなかった。彼らは福田嘉の金銭への執着をよく知っていた。お金を見ると目の色が変わるタイプで、今大金が残ることを知ったら絶対に見逃さないだろう。

しかし、彼らも何も言えなかった。結局、福田嘉はそういう人なのだ。彼女と揉めれば須田透の休養に影響が出るに違いない。

……

その時、病院の会計窓口で、福田嘉は興奮を隠しきれない様子で言った。「このカード、残りのお金を私のカードに振り込んでください」