551 石川直の接待

「ここで無駄話をする必要はないでしょう?」石田静は顔を上げ、長年の苦労を経て多くのことを悟ったようだった。

「ああ、一緒に行こう!」昨日の石田海香からの侮辱を思い出し、井野忠はすぐに興味を示した。まさか石田静から連絡が来るとは思わなかった。

二人が立ち去る様子を、近くに停めてあった黒のポルシェ356Aの窓がゆっくりと下がり、石田一葉が二人の動きを見つめながら、不自然な笑みを浮かべていた。

石田静は井野忠を見て笑いながら言った。「これだけの年月が経っても、まだまだお元気そうですね。今回の東京行きは何のためですか?」

「あの時、なぜ突然投獄されたんだ」井野忠は石田静の質問に答えず、逆に質問を投げ返した。

その言葉に石田静の表情が曇った。心の底から粘っこい血の匂いが込み上げてきた。どうしてこの人たちはこんなにも簡単にその質問を口にできるのだろう?