福田家は雲原静に期待していないものの、彼女は福田章のための保険的な存在だった。
「ただの友人です。その日たまたま雲原さんと出会っただけです」石川直は本当のことは言えなかった。雲原家に転職したいから雲原静に取り入っているなんて言えるはずがない。
「じゃあ、今から入りましょうか。どう思う?」福田嘉は興奮気味に言った。
「焦る必要はありません。これは深井からあなたへのプレゼントです。気に入っていただけますでしょうか」石川直はそう言いながら、小さな箱を福田嘉に手渡した。
福田嘉は急いで開けてみると、中にダイヤモンドの指輪が入っていた。
「こ、これはどういう意味?」福田嘉は困惑しながらも、鳩の卵ほどの大きさのダイヤモンドを見つめる目には、隠しきれない興奮と喜びが浮かんでいた。